軍事行動が常態化した海上自衛隊

海上自衛隊が中国海軍の封じ込めを本格化させている。海域は主に南シナ海。中国が台湾、フィリピンに沿って引いた九段線(第1列島線)の内側で中国海軍を牽制し、行動の自由を奪おうというのだ。

日本は専守防衛が国是だが、安全保障関連法の制定により、他国軍との共同行動が世界規模に広がり、海上自衛隊は日本から遠く離れたインド洋や南シナ海での軍事行動を常態化させている。もはや、憲法の縛りなどないも同然だ。

本来、自衛隊による警戒・監視の南限は、尖閣諸島を含む東シナ海まで。訓練も日本やその周辺で行われ、他国に脅威を与えることがないよう抑制的に振る舞ってきた。

しかし、2016年8月、当時の安倍晋三首相はケニアで開かれたアフリカ開発会議(TICAD)で「自由で開かれたインド太平洋」を打ち出し、中国の習近平国家主席が掲げる巨大経済圏構想「一帯一路」に対抗する狙いを鮮明にした。

これを受けて、海上自衛隊は翌17年、米国とインドの共同訓練「マラバール」に継続して参加することを表明。日米印の3カ国共同訓練に格上げされた「マラバール2017」には海上自衛隊最大の空母型護衛艦「いずも」と汎用護衛艦「さざなみ」が参加し、インド東方海域で対潜水艦戦(対潜戦)訓練などが大々的に実施された。

隠密行動を旨とする潜水艦は、艦船にとって最大の脅威。この潜水艦を排除するのが対潜戦である。
中国に圧力を掛ける

中国海軍の潜水艦はインド洋を航行している様子が確認されており、パキスタンやスリランカにも寄港している。「マラバール2017」が中国の潜水艦への対処を意識したのは明らかだ。

マラバールは18年にはグアム沖、19年は佐世保沖で実施された。グアムや佐世保は「一帯一路」のうち、海のシルクロードとされる「一路」には入らない。そこで海上自衛隊は18年度、19年度とも「インド太平洋派遣訓練部隊」を編成し、南シナ海に汎用護衛艦と「いずも」型の2番艦「かが」と「いずも」を交互に派遣した。

そして今年の「令和2年度インド太平洋方面派遣部隊」は「かが」と汎用護衛艦「いかづち」の2隻を9月7日から10月17日までインド洋と南シナ海に送り込んだ。2隻はスリランカ、インドネシア、ベトナムに寄港して各国海軍との信頼醸成に務めたが、もちろん派遣の主目的が友好親善などであるはずがない。

本来の目的は、米国、オーストラリア、インド各国の海軍と共同訓練を行うことにより、日米豪印4カ国の結束を見せつけ、南シナ海の環礁を埋め立てて軍事基地化を進める中国に圧力を掛けることにある。

派遣部隊の「かが」「いかづち」は、9月13日から17日までオーストラリア海軍の駆逐艦「ホバート」と南シナ海で、同26日から28日までインド海軍の駆逐艦「チェンナイ」、フリゲート艦「タルカシュ」や航空機とインド西方沖で、10月12日には米海軍の駆逐艦「ジョン・S・マケイン」と南シナ海で、それぞれ共同訓練を行った。

訓練内容について、海上自衛隊は「各種戦術訓練」とのみ発表し、具体的な訓練の中身を明らかにしていない。しかし、駆逐艦や航空機が参加したことから、敵航空機から艦隊を守る防空戦、また敵艦艇から守る対水上艦戦の共同訓練を実施した可能性が高い。

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